義母の足音が近づくたび
首筋がこわばる。
台所で背中を向けていると
「味が薄いね」のひと言が
静かに刺さる。
わたしもそうだった。
言葉は柔らかいのに
視線だけが鋭い。
距離を測り損ねるたび
心が少しずつ削れていく。
わたしが守った三つの線
1. 返事は短く、情報は最小
うなずきと「そうだね」だけ置く。
詳しく答えすぎない。
話題を深掘りさせないための
薄い壁を一枚つくる。
2. 台所とリビングを分ける
料理中はイヤホンでゆるい音。
リビングでは義母にテレビを譲る。
物理的な仕切りが
心の仕切りを助けてくれる。
3. 予定をカレンダーに貼る
買い物、散歩、オンライン講座――
外に出る理由を先に決めて書く。
「ちょっと出てくるね」と
自然に席を外せる逃げ道を
カレンダーが用意してくれる。
小さなお願い
どれか一つでいい。
今日中に試してほしい。
線を一本引くだけで
息が少し楽になる。
あなたが自分を守れますように。