わたしは、毎朝同じ電車に揺られて会社へ向かうだけで、もう心も体もギリギリ。
オフィスに足を踏み入れる瞬間から、重い空気が胸にのしかかり、パソコンの前に座ると手の震えが止まらない。
会議室で上司の指示を聞くたびに、頭の中が真っ白になり、言葉が喉元で詰まる。
昼休みが来ても、同僚たちの会話に入る余裕はなく、一人デスクで安っぽい弁当を食べるだけ。
正直味は覚えていない。
電話の着信音が鳴ると鼓動が早くなり、画面に表示される相手の名前を見ただけで息が詰まる。
帰りの電車では、満員の人波に押しつぶされそうになりながら、スマホを握り締める。
その手には、退職代行サービス【モームリ】を何度も再読み込みしている自分がいた。
「もう辞めたい…」と思う。けれども、明日の生活が怖い。
「モームリにお願いすれば、上司に顔を合わせずに済む」と頭では理解しているのに、家賃や公共料金、友人との約束まで――
辞めたあとの現実が頭をよぎって、手も足もすくむ。
夜、自宅の薄暗いリビングで一人、コーヒーを飲みながら悩む。
モームリに頼んだら、すぐに会社とのやりとりは終わる。
でも、その後の生活費や健康保険、そして「わたしは何者なんだろう」という喪失感とどう向き合えばいいのか。
辞めてしまえば自由になるはずなのに、心の隙間は埋まらない気がしている。
結局わたしは、モームリのサイトをまた開き直したまま、スマホの画面をじっと眺めている。
辞める勇気と、その後の不安が交錯し、指は震えたまま――このまま朝を迎えるしかないのだろうか。
